高橋公報文化院長コラム

平成20年1月5日

謹賀新年

在韓日本国大使館 公報文化院長
高橋妙子



 新年明けましておめでとうございます。

 セソシクの読者の皆様には、お元気で新年をお迎えになられたこととお喜び申し上げます。この場をお借りして、昨年中に皆様から日本大使館公報文化院の活動にお寄せ頂いたご支援、ご協力に心より感謝申し上げますと共に、本年が皆様にとりまして幸多き年となりますようお祈り申し上げます。

 さて、私について申し上げれば、昨年8月末にソウルに来て以来、アッと言う間に4ヶ月が経ちました。本当に沢山の方々にお目にかかり、日韓間の様々な交流の現場に立ち会わせて頂くことができました。そして、大変月並みな言い方ではありますが、日韓交流の層の厚さとそれに係わっておられる方々の熱い思いに強く心を打たれました。政府レベルの交流はもとより、市民交流、地方交流、青年交流、ジャーナリスト交流、大学交流、音楽交流、演劇交流、等々、日韓の間には実に多くの分野での交流が行われていることを、ソウルに来て、そして公報文化院長として仕事をしてみて、初めて知るところとなりました。正に目から鱗とは、こういうことを言うのでしょうか。日韓関係はこうした層の厚い、様々なレベルでの交流によって下支えされているのだということを実感した次第です。ここで具体的に幾つか紹介しましょう。

 私は着任の翌日、それこそ何も分からないままに、第7回日韓文化交流基金賞の授与式に出席しました。日韓文化交流基金とは、日韓両国間の文化的交流を強化し、両国国民間の相互理解と信頼を深めることを目的として、1983年に設立された日本の財団法人です。そしてこの基金は、7年前から「日韓文化交流基金賞」というものを設け、日韓関係の増進に貢献のあった個人・団体を顕彰しています。昨年も3組の方々が受賞されましたが(9月号「イルボネ・セソシク」参照)、その中に、「韓国日本語教育研究会」という団体がありました。この協会は、韓国全土の中学・高校の日本語教師により構成され、大部分の日本語教師が会員となっており、会員数は約1,500人に及び、毎年数回、全国レベルでの研究会や地域別研究会を開き、日本語や日本事情・文化に係わる教育の質を向上させるための研究を行っているそうです。韓国における日本語学習者の70%が高校生等で占められているそうです。公報文化院として、これらの高校生一人一人にリーチ・アウトするには限界がありますから、
この協会が韓国の若者による対日理解の促進に果たす役割に自ずと大きな期待を寄せる所以です。

 日本語教育という意味では、先月在日の方々の作る集まりに招待されました。多くが大学や専門学校等で日本語を教えておられる方々でしたが、日本語教育を通じて、どのようにしたら韓国の学生に等身大の日本を理解してもらえるか、日々心を砕いているというお話を聞きました。先の「韓国日本語教育研究会」と共にこうした方々の努力には本当に頭の下がる思いでした。
次に紹介したいのが、ソウル・ジャパン・クラブ(SJC)です。SJCは、1997年に当時の日本人会、日本商工会、そしてジョイント・ベンチャー会が統合して発足したもので、昨年10周年を迎えました。当地の邦人コミュニティーに対する様々な支援を供与するだけでなく、こうした邦人社会が韓国社会の中で「良き市民」として受け入れていただけるよう、韓国人の方々と共に様々な文化交流事業にも積極的に取り組んで来ています。例えば、昨年10月に当公報文化院と共催した「日韓カラオケ大会」は、駐日韓国大使館・文化院の後援を頂き、日本からも参加者を募るという、大変大がかりなものでした。先月開催された「クリスマス・チャリティー・コンサート」は、第8回目ということで、ソウル特別市が右コンサートの韓国社会への貢献を評価し、初めて助成金を付けてくれたそうです。もちろん、10月に開催された「日韓交流おまつり2007in Seoul」の成功も、SJCの存在なくしてはあり得ませんでした。公報文化院にとって、おまつりに限らずSJCは本当に頼もしいパートナーだと言うことができるでしょう。

 日韓の女性パワーをまざまざと見せていただく機会もありました。先ず、韓日・日韓女性親善協会の創立30周年記念合同総会がそれです。「韓日女性親善協会」と「日韓女性親善協会」は、「韓日両国の堅い友情と団結の上にこそ、アジアの平和、ひいては世界の平和がある」という強い信念の下、志を同じくする両国の女性で作られたそうです。以来30年間、協会同士の相互訪問・交流会等を行うと共に、青少年交流なども積極的に推進して来られています。我が公報文化院としても、「日韓・韓日児童絵画交流展」等で大変お世話になってきました。日本では、「冬のソナタ」を契機に「知的中高年女性」を巻き込んで韓流ブームが起こったことはよく知られていますが、両国の女性親善協会は30年も前から日韓相互の文化に関心を抱き活発に交流して来ておられる訳で、両協会の先見性に驚かされた次第です。

 同様に女性パワーということで、日本の扇千景前参議院議長について触れたいと思います。扇氏は、元「宝塚歌劇」の大物スターで、引退後長く参議院議員を務め、その間国土交通大臣等の要職を務められた方です。韓国との関係では、日韓議員連盟や日韓協力委員会のメンバーとして大変活発に活動されて来られて、金ジョンピル元国務総理等の韓国側要人とも大変親しい関係にあります。その扇氏は、昨年11月に韓日関係への貢献を評価され、慶南大学北漢大学院から名誉博士号を授与されました。私も授与式に参列する光栄を得ましたが、その際、扇氏はワールド・カップ日韓共同開催に際して、国土交通大臣として金浦-羽田間のチャーター便の実現に尽力されたというお話をして下さいました。扇氏曰く、何が大変だったかというと、例えば韓国での試合をして勝ったチームが日本に行くことになる場合、どちらのチームが勝つかによって、羽田に行くサポーターの数が全く違ってくるため、チャーター便のスケジュールをどのように組むか、羽田に着いた観客を如何に円滑に競技場に運ぶか、そしてそのための入国管理体制をどのように整えるか、等々多くの困難があったそうです。しかしながら、結果的に全体としては大変上手く行き、今日では、羽田―金浦間に定期便が飛ぶようになった訳です。我々が今日当然のことと思っているさまざま日韓間の便宜も、この例のように、多くの先達の力があってこそなんだと認識を新たにした次第です。

 最後に、純粋民間レベルでの取り組みについてご紹介しましょう。昨年10月に1年の長期公演を終えた劇団四季のミュージカル「ライオン・キング」です。既にご案内の読者もいらっしゃるかも知れませんが、1年以上前に劇団四季が韓国に進出してくることに対しては、韓国のミュージカル業界が挙って反発したそうです。しかしながら、「より質の高いミュージカルをより安い値段で見られるならいいじゃないか」との市民の声に押されて出てくることになったそうです。私も千秋楽の前日に拝見する機会を頂きましたが、韓国人俳優達による素晴らしい熱演に、文字通り熱くなりました。1年間の長期公演はビジネス的には必ずしも高収益を上げるという結果にはならなかったようですが、それでもこの間に出場した韓国人俳優の中には、既に韓国劇団から主役に抜擢されることになっている人や、そのまま劇団四季の福岡公演(日本語)に出演が決まった人がいるとのことで、劇団四季の取り組みが日韓交流にまた新たな局面を開いたように感じたものでした。

 以上、私の韓国での4ヶ月を振り返って見ましたが、これら以外にも日韓の間には本当に多くの交流の担い手たちがおられることに意を強くします。日本大使館公報文化院は、本年もこれらの多くの方々、団体と手を携えて、日韓文化交流の増進と両国民の相互理解のために努力して参りたいと考えています。何卒よろしくご支援のほどお願い申し上げます。

※本原稿は当館発行の日本情報誌『イルボネ・セソシク』(韓国語)用に書かれたもので、読者は主に韓国人を想定しています。